「できるなら一棟マンション投資をしてみたい」と考えつつ、高額な費用に躊躇している人は多いようです。ここでは、マンションの一棟買いに必要な資金について解説します。注意点もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
マンションを一棟買いするのに、全てキャッシュで支払える人はほとんどいないでしょう。多くの人が銀行などのローンを利用しますが、その場合でも、購入額全体の1割〜2割程度の自己資金(頭金)が必要です。
ローンの審査では、物件の収益性と事業計画の健全性、投資家本人の信用と属性(年収など)がチェックされます。大都市圏の優良物件など、よほど物件の収益性が高く、投資家自身も社会的信用が高い場合は自己資金が1割でも審査に通るかもしれませんが、多くの場合は2割程度の自己資金がなくては審査に通りません。
1億円の物件なら、できるだけ2,000万円の自己資金を目指しましょう。
また、金融機関は自己資本を「返済能力」の指標として評価しますが、単なる現金残高だけではなく、資産構成や出所の安定性(相続か、事業収益かなど)もチェックしています。たとえば、以下のような見せ方の違いがあります。
金融機関に自己資本を適切に評価してもらうためには、「金額の多さ」だけでなく、「構成のバランス」「資金の透明性」「利用可能性」まで意識した資産管理と提示が求められます。見せ方を工夫し、信頼性の高い資産として認識されるよう準備を整えておくことが重要です。
一口にマンションの一棟買いと言っても、新築物件を建築するのか、中古物件を購入するのかによって費用は異なります。

上記のグラフは、楽待で紹介されている一棟マンション価格の推移について示したグラフです。
2025年に入り、一棟マンションの価格は2億2,438万円に達し、これは前の四半期(2億529万円)から1,954万円の上昇です。この数字は、2016年7〜9月期の過去最高額(2億2,355万円)を上回る結果となり、明確な上昇トレンドが見られます。
価格は一時的に調整局面に入っていたものの、直近では投資ニーズや需要増加により、再び力強い回復傾向が現れていることが分かるグラフです。
例えば新築物件を建築する場合、鉄骨造の坪単価は約89万円、鉄筋コンクリートの坪単価が約91万円※なので、1LDK×10室(80坪)のマンションを建てる場合の費用相場は以下の通りです。
土地を所有していない方は、建築費用に加えてさらに土地取得費用もかかります。
中古マンションの購入費用は、エリアや規模、物件の状態などによって異なり、数百万円〜数十億円までさまざまです。
例えば、延床面積250~270㎡の物件を東京都・埼玉県・千葉県の3エリアで比較したデータによると、東京都の鉄骨造マンションが1億6,180万円であるのに対して、埼玉県では8,300万円、千葉県では4,600万円※でした。
一棟マンションは一般住宅より敷地面積が広く、土地相場の影響を受けやすいため、地価が高いエリアほど物件費用が高額になります。
2024年(第1四半期~第3四半期)における東京都内の中古一棟アパート・マンションの成約価格データを簡単にまとめると、以下のような特徴が確認できます。
平均値だと高額物件も含まれて判断がむずかしくなるため、中央値を計算しました。
※下記内容は、国土交通省が提供する不動産情報ライブラリ(東京都の不動産取引データ 2024年第1四半期~第3四半期)をもとに、作成しました。
ポイントとなるのは、全体的に見て第1四半期をピークにやや下落傾向が見られる点です。まだ大きく崩れているわけではなく、緩やかな調整局面にあると考えられます。
東京都内といっても、23区中心部とそれ以外のエリア、さらに市部では大きく事情が異なります。都心一等地は依然として需要が強く、比較的小さな物件でも高額で取引されることがあります。
一方、郊外や市部は相対的に単価が落ち着いている傾向にあり、同じ“東京”でも場所による差は非常に大きいのが実情です。
また、物件規模(延床面積が大きい/小さい)や築年数、道路付け、最寄駅からの距離によっても価格が変動します。「都内だから高い・郊外だから安い」と一括りにはできないため、個別物件の調査が重要です。
東京と同じ手法で神奈川県・埼玉県・千葉県の取引相場をまとめてみました。
| 成約価格(総額)の中央値 | 1㎡あたり成約価格の中央値 | |
|---|---|---|
| 東京 | 1.3億円~1.5億円 | 56万円~61万円 |
| 神奈川 | 0.65億円~0.77億円 | 32.7万円~35万円 |
| 埼玉 | 0.65億円~0.69億円 | 22万円~25万円 |
| 千葉 | 0.46億円~0.65億円 | 18.8万円~25.4万円 |
神奈川県は横浜・川崎など都心に近いエリアを抱えており、比較的高い単価で取引される物件が多いです。一方、埼玉・千葉は都心寄りの一部エリアが高値を保つものの、全体としてはより抑えめになる傾向が見られます。
地方都市を持つ、大阪府・北海道・福岡県の取引相場をまとめてみました。
| 成約価格(総額)の中央値 | 1㎡あたり成約価格の中央値 | |
|---|---|---|
| 東京 | 1.3億円~1.5億円 | 56万円~61万円 |
| 大阪 | 1.1億円~1.3億円 | 26.2万円~29.8万円 |
| 北海道 | 0.3億円~0.4億円 | 9.6万円~10.8万円 |
| 福岡 | 0.61億円~0.78億円 | 19.2万円~26.5万円 |
大阪・福岡などの政令指定都市を抱えるエリアでは、中心部と郊外で価格差が大きい一方、北海道は札幌一極に需要が集中しやすいものの、全体としては安価な取引も多く見受けられます。
収益用不動産が数多く登録されている総合情報サイト「RE-Guide(リガイド)」をチェックしてみたところ、2024年3月31日時点での一棟売りマンションの最高値は16億5,000万円でした。大分県別府市にある全70戸の大規模マンションです。
最安値は3億円。東京都中野区にある全9戸の築浅マンションでした。最も多い価格帯は、3億円〜4億円です。
マンション一棟買いの価格帯は、物件の立地や規模、築年数、構造などによって大きく異なります。以下に価格帯ごとの特徴を詳しく説明します。
1億円以下の物件は、地方都市や郊外に位置していることが多く、築年数が経過している中古物件が中心です。構造は木造や軽量鉄骨造が多く、建築コストが比較的低いことが特徴です。
初期投資額が低く、表面利回りが高くなる傾向がありますが、空室リスクや修繕費用の増加が収益性を下げる可能性があります。また、地方物件の場合、賃貸需要が低いエリアでは入居者を確保する難易度が高い点も留意が必要です。
都市部の周辺地域や地方の主要都市に多く見られる価格帯です。鉄骨造や鉄筋コンクリート造の中規模マンションが中心で、築年数が比較的新しい物件も含まれます。
賃貸需要が安定しているエリアでは、長期的に安定した収益が期待できます。物件の資産価値も維持されやすく、修繕費用も比較的抑えられます。一方で、都市部では競争が激しいため、差別化ポイントのある物件選びが重要です。
都市部の中心地や高級住宅街に立地する大規模マンションが多く、高級志向の設備やデザインが特徴的です。
高い家賃設定が可能で、収益額自体は大きくなりますが、初期投資額が多額であるため、表面利回りは低くなる傾向があります。また、入居者のニーズや経済状況に影響を受けやすいリスクがあります。
マンションを一棟買いする際には、さまざまな点に気をつけなくてはなりません。ここでは、特に注意したい3つのポイントをご紹介します。
マンションを新築する場合は、建物の建築費のほかに、地盤改良工事や電気工事・ガス工事、駐車場や庭などの外構工事といった付帯工事費がかかります。さらに、不動産取得税(司法書士費用)や登記費用、ローン手数料、各種保険料、仲介手数料、建築確認申請等手数料などさまざまな諸費用が発生します。
費用の目安は、物件価格の6~8%です。3億円の物件なら1,800~2,400万円、1億円の物件なら600~800万円ほどかかるため、忘れず準備しておきましょう。
例として、1億円のマンションを購入する際に発生する諸費用の具体例を項目ごとに詳しく解説します。
費用例: 約150万円~200万円
不動産取得税は、物件価格の4%を基準に計算されます。ただし、新築や特定の要件を満たす物件については減税措置が適用される場合があります。
不動産取得税は、土地や建物を取得した際に都道府県に納める税金です。課税標準額は購入価格ではなく、固定資産評価額が基準となるため、物件の評価額により多少変動します。
費用例: 約100万円~150万円
登記費用には、「所有権移転登記」と「抵当権設定登記」の費用が含まれます。司法書士への報酬も必要です。
所有権移転登記は、購入者名義に変更する手続きで、不動産の権利を法的に保護するために必須です。抵当権設定登記は、ローンを利用する場合に金融機関が担保を設定する手続きです。
費用例: 約330万円
仲介手数料は、物件価格に応じて以下の計算式で求められます:
(物件価格 × 3% + 6万円) × 消費税
仲介手数料は、不動産業者が物件の仲介を行った対価として支払う費用です。高額物件ほど金額が大きくなるため、資金計画に入れておく必要があります。
費用例: 約50万円~100万円
建物の火災保険や地震保険の加入が一般的です。
火災保険は、建物の損壊リスクに備えるために必須です。地震保険は任意ですが、地震による損害をカバーするため、多くの投資家が加入を検討します。保険料は建物の構造や立地条件により異なります。
費用例: 約50万円~100万円
金融機関がローンの設定や事務手続きにかかる費用として請求します。
ローン手数料は、借入金額や金融機関の設定により異なります。ローンを利用しない場合、この費用は発生しません。
費用例: 約50万円~80万円
印紙税は、売買契約書に貼付する収入印紙代で、物件価格に応じて変動します(1億円の物件では約6万円)。建築確認申請手数料や証明書取得費用は、購入プロセスに伴う実費として計上されます。
費用例: 約100万円~150万円
建物のインスペクションは、購入前に物件の状態を確認するために重要です。また、税理士や不動産コンサルタントに相談する場合は、その費用も考慮します。
総額例: 600万円~800万円(物件価格の約6%~8%)
諸費用は物件価格の6%~8%程度が一般的な相場です。1億円のマンションを購入する場合、600万円~800万円の追加費用が発生するため、事前に資金計画を十分に立てることが重要です。
一棟マンション投資は、建物を購入して終わりではありません。入居者に選ばれる物件であり続けるためにも、建物の清掃やエレベーターのメンテナンス、退去時のリフォームなどさまざまな維持管理を行うことが大切です。
維持費用の目安は、家賃収入の20%~30%程度です。設備の故障や空室リスク、家賃滞納などに備えるための資金として、1億円のマンションなら最低でも500万円程度の現金をプールしておきましょう。
一棟マンションは、大きな利益が得られる一方、失敗したときの損失が大きくなりがちです。地域全体の需要が変化して空室が続いた場合、家賃収入が一気に減ってしまう可能性があります。また、戸数が多いマンションほど、入居者同士の騒音トラブルや家賃滞納といったリスクが高まります。
一棟売りマンションの購入を検討する際は、メリットだけでなく、デメリットやリスクもしっかり把握してから決断してください。
一棟マンション投資に向いている人の特徴は、以下の3つです。
地域や物件の条件・時期などによって異なりますが、一棟マンションを購入するためには、数億~数十億円ほどの費用がかかります。銀行からのローンで購入する場合でも、初期費用とは別に物件価格の10〜20%の頭金を準備しなくてはなりません。
初期費用と頭金の合計で、物件価格の20〜30%の自己資金が必要なため、「興味があっても手が出せない」という人が多いようです。しかし、一棟マンション投資は「リスクが低く安定した利益を得られる」優れた投資方法です。初期費用を準備できるなら、ぜひトライしてみてください。
節税対策や株価対策をしたい方や資産の組み換えを検討している方にもおすすめです。特に、利便性の高い・賃貸ニーズの高いエリアに土地を所有している方は、一棟マンションを建てることで、より大きな収益を得られるでしょう。更地よりもマンションを建設したほうが固定資産税と都市計画税が安くなるため、節税効果も期待することができます。
マンション一棟買いしても
成功が保証されたわけではない
一棟マンションの購入にかかる費用について解説しました。一棟マンション経営を成功させるためには、どんな物件にどんな取得費や維持費がかかるかを理解した上で、継続して家賃収入が得られる物件を選ぶことが大切です。
家賃収入が得られる物件とは、強力な差別化ポイント(付加価値)を持った、数ある賃貸マンションとの競争に勝てる物件のことです。
など、他のマンションよりも魅力を感じられるポイントがあれば、入居者が集まりやすくなり、安定した収入を得ることができます。
近年特に注目されているのが、防音・遮音性です。生活音でトラブルになる人も多いため、大きな音を鳴らしても近所迷惑にならない防音マンションが人気を集めています。
一棟マンション投資の成功を目指したい方は、防音性や遮音性などの付加価値の高い物件を選んでみてはいかがでしょうか。